以前クリニックでアトピーを理由に断られた。施術で湿疹が悪化するのではないかと不安。カミソリ負けがひどく自己処理でも荒れる――。こうした悩みを抱えながら、脱毛を諦めかけている人は少なくありません。
しかし、アトピー肌でも脱毛は可能です。寛解期に適切なタイミングと手順を守れば、安全に減毛を進められます。この記事では、アトピー性皮膚炎と脱毛の両立を実現するための医学的根拠と、生活者が実務で再現できる具体的な手順を提示します。読み終える頃には、自分の肌状態を客観的に判断し、安全に脱毛を開始・継続できるようになります。
- 1 この記事で得られる三つのこと
- 2 結論:アトピーと脱毛は寛解期なら両立可能
- 3 アトピー肌が刺激に弱い理由:バリア機能の脆弱性
- 4 禁忌と施術可否の判断:境界線を明確化
- 5 デバイス別の一般的傾向:波長と冷却の観点から
- 6 事前準備とテスト:安全な施術のための下準備
- 7 施術日の安全運用:低出力とクーリングの徹底
- 8 施術直後の48時間ケア:炎症を最小化する黄金期間
- 9 1週間の回復計画:バリア機能の修復
- 10 2〜4週間の中期ケア:角質リモデリングと色調改善
- 11 部位別の最適化:皮脂量と摩擦への対応
- 12 家庭用脱毛器を使う場合
- 13 ケーススタディ:アトピー肌での脱毛成功例
- 14 よくある誤解の訂正
- 15 クリニック/サロンとの連携
- 16 まとめ:今日から始める行動リスト
- 17 参考情報:用語集とFAQ
- 18 医療助言に関する注意事項
この記事で得られる三つのこと
- アトピー肌が刺激に弱い理由と、脱毛時に注意すべき生理学的メカニズムを理解できる
- 施術可否の判断基準と、寛解期における低出力運用の具体的セオリーを習得できる
- 施術直後から中長期までの時系列ケアを成分と頻度で把握し、炎症や色素沈着を回避できる
結論:アトピーと脱毛は寛解期なら両立可能
アトピーと脱毛の両立は可能ですが、条件があります。最も重要な条件は、寛解期に限定することです。寛解期とは、湿疹や炎症が落ち着き、皮膚の状態が安定している時期を指します。
炎症部を避け、低出力で開始することも必須です。医療脱毛でもサロン脱毛でも、通常設定より低い出力から始め、肌の反応を見ながら段階的に調整します。冷却を強化し、施術後の保湿と遮光を徹底することで、刺激を最小限に抑えます。
保湿、遮光、摩擦管理が成否の鍵です。アトピー肌はバリア機能が低下しやすく、乾燥や摩擦で悪化します。ヘパリン類似物質やセラミドを中心とした保湿、SPF50以上の日焼け止め、柔らかい素材の衣類やマスクで摩擦を減らすことが重要です。
やってはいけない行為は以下の通りです。
- 湿疹や炎症がある部位への照射
- ステロイド外用直後の照射
- 施術後48時間以内の熱い湯、サウナ、激しい運動
- 掻破(掻くこと)や強いスクラブ
- 紫外線対策の怠慢
この方針を守れば、アトピー肌でも安全に脱毛を進められます。
アトピー肌が刺激に弱い理由:バリア機能の脆弱性
アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因と環境要因が複合して発症する慢性の炎症性皮膚疾患です。その中心には、角質層のバリア機能の低下があります。
角質層とバリア機能
皮膚の最外層である角質層は、死んだ細胞(角質細胞)が重なり合い、細胞間を脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸)が満たす構造です。この層が、水分の喪失を防ぎ、外部からの刺激物質や微生物の侵入を阻む「バリア機能」を担います。
アトピー肌では、遺伝的にフィラグリン(角質細胞の構造を支えるタンパク質)が不足していることが多く、角質層が脆弱です。また、セラミドなどの細胞間脂質も減少しており、バリア機能が低下しています。
TEWL上昇の影響
バリア機能が低下すると、TEWL(Trans-Epidermal Water Loss:経表皮水分喪失、皮膚から水分が逃げる度合い)が上昇します。水分が失われた角質層は硬くなり、微細な亀裂が生じやすくなります。そこから刺激物質が侵入し、炎症反応を引き起こします。
脱毛施術では、レーザーや光のエネルギーが熱に変換され、毛根周囲の組織を加熱します。この熱刺激が、バリア機能の低下したアトピー肌に加わると、通常の肌より強い炎症反応を引き起こします。
乾燥、温熱、摩擦、菌叢の関与
アトピー肌の悪化には、複数の要因が絡み合います。
乾燥は、角質層の水分量を減らし、バリア機能をさらに低下させます。空調や低湿度環境、入浴後の保湿不足が乾燥を加速します。
温熱は、血管を拡張させ、かゆみや赤みを増強します。脱毛施術そのものだけでなく、入浴やサウナ、激しい運動による体温上昇も含まれます。
摩擦は、衣類やマスク、シェービングによる物理的刺激で、角質層を削り取り、バリア機能をさらに低下させます。脱毛後の肌は特に脆弱なため、摩擦の軽減が重要です。
菌叢の乱れも関与します。アトピー肌では、黄色ブドウ球菌やマラセチア(真菌)が増殖しやすく、炎症を悪化させます。清潔を保ち、二次感染を防ぐことが必要です。
掻破が悪化サイクルを作る仕組み
かゆみが生じると、無意識に掻いてしまいます。掻破は角質層を物理的に損傷し、バリア機能をさらに低下させ、炎症を悪化させます。悪化した炎症はさらにかゆみを生み、再び掻く――この悪循環が「痒み掻き壊しサイクル」と呼ばれます。
脱毛後は、施術による熱刺激や乾燥でかゆみが出やすくなります。掻破を防ぐため、保湿と冷却を徹底し、必要に応じて抗ヒスタミン薬を内服します。
禁忌と施術可否の判断:境界線を明確化
アトピー肌での脱毛は、すべての状態で可能というわけではありません。施術が避けるべき状態と、可能な状態の境界線を明確にします。
湿疹の活動性、浸出、亀裂、二次感染、広範囲の紅斑
以下の状態では、施術を延期または中止します。
湿疹の活動性:赤み、腫れ、丘疹(ブツブツ)、小水疱が見られる場合、炎症が活発です。この状態で照射すると、炎症が悪化し、PIE(Post-Inflammatory Erythema:炎症後紅斑、施術や掻破後に残る赤み。血管拡張が主因)やPIH(Post-Inflammatory Hyperpigmentation:炎症後色素沈着、炎症後に増えたメラニンで生じる色調差)のリスクが高まります。
浸出(湿潤):患部から透明または黄色の液体が滲み出ている場合、バリア機能が著しく損なわれています。この状態での照射は、感染リスクを高め、治癒を遅らせます。
亀裂:乾燥や掻破によって皮膚に裂け目が生じている場合、照射による熱刺激で痛みが強く出るだけでなく、感染リスクも高まります。
二次感染:黄色ブドウ球菌やヘルペスウイルスなどの感染が疑われる場合(膿、強い痛み、発熱、リンパ節の腫れ)、施術は中止し、医療機関を受診します。
広範囲の紅斑:照射予定部位の50%以上に赤みが広がっている場合、炎症が全体に及んでいるため、施術は延期します。
可否の境界線
施術可能な状態:
- 湿疹が完全に落ち着いている(寛解期)
- 皮膚が乾燥しているが、亀裂や浸出はない
- 軽度の色素沈着が残るが、炎症はない
- 触っても痛みやかゆみがない
施術延期が望ましい状態:
- 軽度の赤みやかゆみが残る
- ステロイド外用を週3回以上使用中
- 過去1週間以内に掻破が頻繁にあった
- 季節の変わり目で悪化傾向
施術中止が必須な状態:
- 湿疹、浸出、亀裂、二次感染、広範囲の紅斑のいずれかがある
- 強い痛みや発熱がある
部位分割の現実解
全身すべてが寛解しているとは限りません。顔は落ち着いているが、膝裏に湿疹がある、といった場合、部位分割照射を検討します。
寛解している顔やヒゲは予定通り照射し、湿疹がある膝裏は延期する、という具合です。これにより、全体の進行を止めずに済みます。ただし、部位ごとの進行にズレが生じるため、最終的な仕上がり時期が不均一になる可能性を理解します。
施術者との相談が必須で、カルテに記録を残してもらいます。
デバイス別の一般的傾向:波長と冷却の観点から
脱毛に使用されるレーザーや光デバイスは、それぞれ特性が異なります。アトピー肌に適したデバイスを選ぶため、波長、パルス幅、スポットサイズ、表面冷却の観点から整理します。
アレキサンドライトレーザー(755nm)
波長が短く、メラニンへの吸収率が高いため、色白から普通肌に高い脱毛効果を発揮します。一方で、表皮のメラニンにも強く反応するため、アトピー肌では表皮ダメージや赤みが出やすい傾向があります。
冷却装置と組み合わせることで、表皮の温度上昇を抑えられますが、出力を通常より低めに設定し、冷却時間を長めに取る運用が推奨されます。アトピー肌で色白の場合、初回は最低出力からスタートし、反応を見ながら段階的に上げます。
ダイオードレーザー(800〜940nm)
アレキサンドライトよりやや長波長で、メラニン吸収が若干穏やかです。冷却装置との組み合わせが一般的で、表皮への負担を軽減しながら照射できます。アトピー肌に対しては、比較的柔軟に対応できるデバイスとされます。
パルス幅(光が照射される時間の長さ)を長めに設定することで、熱の広がりを緩やかにし、表皮への瞬間的な高温を避けられます。アトピー肌では、パルス幅を長く、出力を低めにする設定が一般的です。
YAGレーザー(1064nm)
波長が長く、表皮のメラニンへの吸収が相対的に低いため、色黒肌やアトピー肌に適しています。深部の毛根まで到達しやすく、表皮リスクを抑えながら照射できる可能性があります。
ただし、深部への熱伝達により、浮腫や遅発性の赤みが生じることがあります。アトピー肌では、施術後の冷却と保湿をより徹底する必要があります。
SHR(Super Hair Removal)
蓄熱式と呼ばれ、低出力の光を連続照射して毛包周囲にじわじわ熱を蓄積させます。瞬間的な高温を避けるため、痛みや炎症が少なく、アトピー肌に向いているとされます。
ただし、効果が緩やかなため回数を重ねる前提です。アトピー肌で痛みに弱い人には、最も安全性の高い選択肢の一つです。
IPL(Intense Pulsed Light)
広範囲の波長を含む光で、主にサロン脱毛で使用されます。メラニンだけでなく血管など複数のターゲットに作用するため、一般的には医療レーザーより刺激が少なめです。
アトピー肌に対しては、出力を低めに設定し、冷却ジェルを多めに塗布することで、刺激を最小限に抑えます。ただし、効果も緩やかなため、長期的な視点で取り組む必要があります。
以下の表に、各デバイスの特徴とアトピー肌での運用目安をまとめます。
表1:デバイス比較とアトピー肌での運用目安
| デバイス | 波長 | メラニン吸収 | アトピー肌での出力設定 | 冷却・パルス幅の工夫 | 向き不向き |
|---|---|---|---|---|---|
| アレキサンドライト | 755nm | 高 | 最低出力からスタート | 冷却時間を長く、パルス幅やや長め | 寛解期の色白肌に慎重対応 |
| ダイオード | 800〜940nm | 中 | 通常より10〜20%低め | パルス幅長め、冷却強化 | 比較的柔軟 |
| YAG | 1064nm | 低 | 通常設定可、反応見て調整 | 施術後冷却を徹底 | 色黒アトピー肌に適 |
| SHR | 広帯域 | 低〜中 | 低出力連続照射 | 蓄熱式で瞬間高温回避 | 最も安全性高い |
| IPL | 広帯域 | 中 | 低めスタート | ジェル量多め、冷却重視 | サロンで一般的 |
この表はあくまで一般的な傾向であり、実際の判断は肌状態、部位、施術者の経験によって変わります。
事前準備とテスト:安全な施術のための下準備
アトピー肌での脱毛を安全に進めるため、施術前に自分の状態を整理し、必要な準備を行います。
既往歴、外用歴、内服歴、仕事環境、季節要因をチェック
以下の項目を確認し、カウンセリング時に施術者へ伝えます。
既往歴:
- アトピー性皮膚炎の診断年齢と現在の状態(寛解、増悪のサイクル)
- 接触皮膚炎、金属アレルギー、ケロイド体質の有無
- 過去の脱毛経験で強い赤みや水疱が出たことがあるか
外用歴:
- ステロイド外用の頻度と強度(弱い、中、強い、最強)
- タクロリムス軟膏(プロトピック)の使用頻度
- 保湿剤の種類と頻度
- レチノイドやピーリング剤の使用有無
内服歴:
- 抗ヒスタミン薬の常用
- 抗生物質、光感受性を高める薬
- ステロイド内服や免疫抑制剤の使用
仕事環境:
- 屋外作業や日光曝露の多さ
- マスク着用時間、ヘルメットやゴーグルの摩擦
- 空調による乾燥
季節要因:
- 悪化しやすい季節(多くは冬の乾燥期、または夏の汗と摩擦)
- 花粉やダニなどのアレルゲン曝露
ステロイドやタクロリムスの塗布部位は当日回避
ステロイド外用やタクロリムス軟膏を使用している部位は、当日の照射を避けます。これらの外用薬は、皮膚を薄くしたり、血管を拡張させたりするため、照射による刺激が強く出る可能性があります。
理想的には、施術予定日の3〜7日前から塗布を中止します。ただし、医師の指示で使用している場合、中止の可否を医師に相談します。
レチノイドやピーリングの休薬目安
レチノイド(トレチノイン、アダパレン、市販のレチノールクリームなど)は、角質を剥離し、肌を敏感にします。脱毛施術の1週間前から休薬し、施術後2週間は再開しません。
ピーリング剤(サリチル酸、グリコール酸など)も同様に、施術前1週間と施術後2週間は使用を避けます。これにより、角層のバリア機能を回復させ、刺激への耐性を高めます。
テスト照射と評価手順を時間軸で提示
本格的な照射の前に、小範囲でテスト照射を行い、肌の反応を確認します。
ステップ1:パッチテスト 施術に使用するジェルや冷却剤に対するアレルギー反応を確認します。腕の内側など目立たない部分に少量塗布し、24時間後に赤みやかゆみがないか確認します。
ステップ2:テスト照射 実際のデバイスで、最低出力から数発照射します。照射部位は、照射予定部位のうち、最も肌状態が安定している部分を選びます。
ステップ3:評価
- 24時間後:赤み、ほてり、かゆみの程度を確認します。軽度なら経過観察を続けます。
- 48時間後:赤みが引いたか、水疱やかゆみが悪化していないか確認します。
- 72時間後:最終評価を行います。赤みが完全に引き、痛みやかゆみがなければ、次回から本照射に進めます。
赤みが強い、水疱ができる、かゆみが続く場合は、出力をさらに下げるか、デバイスを変更します。
施術日の安全運用:低出力とクーリングの徹底
アトピー肌での施術当日は、通常より慎重な設定と手順が必要です。
低出力スタートと段階的な引き上げ
初回は最低出力から開始します。例えば、通常の設定が15ジュール(J/cm²)なら、10〜12ジュールから始めます。施術者と相談し、テスト照射の結果を踏まえて決定します。
2回目以降は、前回の反応を見ながら出力を上げます。赤みが24時間以内に引き、痛みやかゆみがなければ、2〜3ジュール程度上げる、という具合です。急激な出力上昇は避け、3〜5回かけて目標出力に到達する計画を立てます。
重ね打ち回避
同じ部位に複数回照射する「重ね打ち」は、アトピー肌では避けます。重ね打ちは効果を高めますが、炎症や色素沈着のリスクも倍増します。一回の照射で丁寧にカバーし、照射漏れがあっても次回に補正する方針が安全です。
クーリング強化
冷却装置が装備されているデバイスでは、冷却温度を最低に、冷却時間を最大に設定します。照射前後にも保冷剤をタオルで包んで当て、表皮の温度上昇を抑えます。
クリニックやサロンによっては、照射後に冷却ジェルを厚めに塗布し、10〜15分間そのまま冷やす手順を取ることもあります。遠慮せず、冷却を強化してほしい旨を伝えます。
ジェル量の最適化
IPLやSHRでは、ジェルを塗布してから照射します。ジェル量が少ないとエネルギーの伝達が不均一になり、局所的に高温になる可能性があります。アトピー肌では、ジェルを通常より多めに塗布し、均一なエネルギー伝達を確保します。
また、ジェルの成分に刺激物質(アルコール、香料、メントールなど)が含まれていないか確認します。アトピー肌用の低刺激ジェルを用意しているか、事前に問い合わせます。
分割照射
全身を一度に照射すると、体への負担が大きくなります。アトピー肌では、顔と体を別日に分ける、あるいは上半身と下半身を分けるなど、分割照射を検討します。これにより、一回あたりの炎症反応を軽減し、回復期間を確保できます。
金属アレルギーが疑われる場合の接触回避
照射ヘッドに金属部分がある場合、金属アレルギーを持つ人は接触皮膚炎を起こす可能性があります。ニッケルアレルギーが最も一般的です。
対応策として、以下を検討します。
- ジェルを厚めに塗布し、金属部分が直接肌に触れないようにする
- 金属フリーのヘッドを使用する(可能な場合)
- 事前にパッチテストでジェルと照射ヘッドへの反応を確認する
以下の表に、施術時の安全設定チェックリストをまとめます。
表2:当日の安全設定チェックリスト
| 項目 | 確認内容 | アトピー肌での推奨設定 |
|---|---|---|
| 出力 | 前回設定値と反応 | 最低出力からスタート、段階的に引き上げ |
| 重ね打ち | 同部位への複数回照射 | 避ける |
| 冷却 | 冷却温度と時間 | 最低温度、最大時間、施術前後に保冷剤追加 |
| ジェル | 量と成分 | 通常より多め、低刺激成分確認 |
| 分割照射 | 全身一括か分割か | 顔と体、上半身と下半身で分ける |
| ステロイド外用 | 当日朝の塗布有無 | 照射部位は3〜7日前から中止 |
| 金属アレルギー | 照射ヘッドの金属部分 | ジェル厚塗り、または金属フリーヘッド |
このチェックリストを施術前に確認し、施術者と共有します。
施術直後の48時間ケア:炎症を最小化する黄金期間
施術後48時間は、肌のダメージが最も強く、適切なケアが回復を左右します。
冷却
施術直後から、保冷剤をタオルで包み、照射部位に1回10〜15分、1日3〜4回当てます。氷を直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため避けます。冷却は血管収縮を促し、PIE(炎症後紅斑)や浮腫を軽減します。
清潔
毛嚢炎や二次感染を防ぐため、清潔を保ちます。施術当日は熱い湯を避け、ぬるま湯で優しく洗います。洗顔料や石鹸は、アミノ酸系やベタイン系の低刺激タイプを選び、泡で包み込むように洗います。タオルで拭く際も押さえるように水気を取り、こすりません。
保湿
乾燥を防ぐため、低刺激の保湿剤を使います。ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)、セラミド、ワセリンが推奨されます。
ヘパリン類似物質は、水分保持能を高め、抗炎症作用もあります。セラミドは、角層の脂質成分を補い、バリア機能を修復します。ワセリンは、封入剤として機能し、水分の喪失を防ぎます。
保湿は、洗顔後5分以内に行うことでTEWLを抑えられます。まず化粧水でヘパリン類似物質を塗布し、乳液やクリームでセラミドを補給し、最後にワセリンを薄く重ねて封入します。
遮光
紫外線は炎症を悪化させ、PIH(炎症後色素沈着)のリスクを高めます。施術後48時間は、SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを使います。ただし、赤みや痛みが強い間は、物理遮蔽(帽子、長袖、日傘)を優先します。
日焼け止めは、ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)、無香料、アルコールフリーの製品を選びます。
使用可の成分と避ける成分
使用可の成分:
- ヘパリン類似物質(保湿、抗炎症)
- セラミド(バリア機能強化)
- ワセリン(封入、保護)
- グリチルリチン酸(抗炎症)
- アロエベラエキス(鎮静)
避ける成分:
- アルコール(乾燥促進)
- 香料(刺激)
- メントール、カンフル(冷感刺激)
- レチノール、レチノイド(角質剥離)
- 高濃度ビタミンC誘導体(10%以上、刺激)
- サリチル酸、グリコール酸(ピーリング作用)
入浴、運動、飲酒、サウナ、日焼けの扱い
入浴:施術後24時間は熱い湯を避け、ぬるめのシャワーのみにします。湯船に浸かると体温が上がり、炎症が悪化します。48時間後も長湯は避け、10〜15分程度に留めます。
運動:激しい運動は発汗と摩擦で毛嚢炎や悪化のリスクを高めます。施術後48時間は軽い散歩程度に留め、ジムやランニングは控えます。
飲酒:アルコールは血行を促進し、赤みやほてりを増強させます。施術後48時間は禁酒が望ましいです。
サウナ:高温環境は炎症を悪化させるため、施術後1週間は避けます。
日焼け:紫外線は最大の敵です。屋外活動を避け、やむを得ない場合は物理遮蔽と日焼け止めを徹底します。
かゆみ対策と掻破防止の工夫
施術後のかゆみは、乾燥や軽度の炎症が原因です。掻くと炎症が悪化し、色素沈着のリスクが高まるため、以下の対処を行います。
- 保湿の強化:ヘパリン類似物質を増量し、頻繁に塗り直します。
- 冷却:かゆみが強い部分を冷やすことで、一時的に緩和されます。
- 抗炎症成分:グリチルリチン酸を含む化粧水やクリームを使用します。
- 抗ヒスタミン薬:かゆみが強く、日常生活に支障がある場合、医師に相談し、内服薬を処方してもらいます。
- 爪を短く切る:無意識に掻いてしまう場合に備え、爪を短く切り、やすりで滑らかにします。
- 綿の手袋:夜間に無意識に掻くことを防ぐため、綿の手袋を着用します。
1週間の回復計画:バリア機能の修復
施術後48時間を過ぎて赤みやほてりが落ち着いたら、バリア機能の回復に集中します。
ヘパリン類似物質やセラミド中心の保湿
ヘパリン類似物質は、水分保持能を高め、角層のバリア機能を修復します。朝晩の洗顔後、化粧水の後に塗布します。セラミド配合の乳液やクリームを重ねることで、封入効果が高まります。
ワセリン封入の使い所
乾燥が強い部分や、夜間の保湿強化として、ワセリンを薄く塗ります。ワセリンは封入剤として機能し、角層からの水分喪失を防ぎます。ただし、厚塗りすると毛穴詰まりのリスクがあるため、薄く伸ばします。
顔の場合、Tゾーンなど皮脂の多い部分は避け、頬や目の周りなど乾燥しやすい部分に重点的に塗ります。
衣類摩擦とマスク摩擦の管理
顔の脱毛後は、マスク摩擦が炎症を悪化させることがあります。以下の工夫で摩擦を最小化します。
- 立体型マスク:肌に密着しないデザインを選びます。
- シルクやコットン素材:不織布より肌あたりが柔らかい素材を選びます。
- サイズ調整:ゴムがきつすぎないように調整し、擦れを防ぎます。
- 頻繁な交換:汗や皮脂が付着したマスクは雑菌の温床になるため、半日ごとに交換します。
体の脱毛後も、衣類の摩擦に注意します。綿やシルクなど柔らかい素材を選び、タイトな衣類は避けます。
抗ヒスタミン内服の一般的な位置づけ
抗ヒスタミン薬は、かゆみを軽減し、掻破を防ぐため、アトピー治療の標準的な選択肢です。脱毛後のかゆみが強い場合、医師に相談し、処方してもらいます。
抗ヒスタミン薬には第一世代(眠気が強い)と第二世代(眠気が少ない)があります。日中の活動に支障がない第二世代が一般的に推奨されます。
2〜4週間の中期ケア:角質リモデリングと色調改善
施術後1週間が経過し、肌が安定してきたら、角質のターンオーバーを整え、色素沈着を予防するケアに移行します。
角質リモデリングの導入
角質リモデリングとは、古い角質を適切に除去し、新しい角質の生成を促すプロセスです。アトピー肌では、刺激の強いレチノイドやAHA(グリコール酸、乳酸など)を避け、穏やかな成分から始めます。
アゼライン酸低濃度や穏やかなAHAの再開タイミング
アゼライン酸(5〜10%)は、抗菌作用とメラニン生成抑制効果を持ち、毛嚢炎とPIHの両方に有効です。アトピー肌にも比較的安全で、施術後2週間から使用を開始できます。夜のみ使用し、最初は週2回から始めます。
初期はヒリヒリ感があることがありますが、通常は数日で慣れます。刺激が強い場合は、頻度を週1回に減らし、保湿を強化します。
穏やかなAHA(乳酸3〜5%、またはマンデル酸5%)は、グリコール酸より分子が大きく、刺激が少ないため、アトピー肌に適しています。施術後2週間から、週2回程度、夜のみ使用します。使用後は必ず保湿を徹底します。
PIEとPIHの見分け方と遮光の徹底
施術後に残る赤みや茶色い色素は、PIE(炎症後紅斑)とPIH(炎症後色素沈着)に分けられます。
PIEは赤み(血管拡張)で、押すと一時的に白くなり、離すと再び赤くなるのが特徴です。通常は数日から2週間で改善します。対処法は、冷却と抗炎症成分(グリチルリチン酸、ナイアシンアミド)です。
PIHは茶色い色素沈着(メラニン増加)で、押しても色が変わりません。完全に消えるまで数か月かかることもあります。対処法は、紫外線対策とメラニン生成抑制(ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、ナイアシンアミド)です。
アトピー肌では、掻破や炎症によってPIHが出やすいため、紫外線対策が特に重要です。SPF50、PA++++の日焼け止めを毎日使い、2〜3時間ごとに塗り直します。物理遮蔽も併用し、帽子やサングラスで顔を保護します。
以下の表に、時系列ケアをまとめます。
表3:時系列ケア 48時間/1週間/2〜4週間
| 期間 | 冷却 | 洗顔 | 保湿 | 特殊ケア | 遮光 |
|---|---|---|---|---|---|
| 48時間 | 保冷剤1日3〜4回 | 低刺激アミノ酸系朝晩 | ヘパリン+セラミド+ワセリン | なし(刺激成分すべて避ける) | SPF30以上、物理遮蔽優先 |
| 1週間 | 必要に応じて継続 | 同上 | 同上 | 抗ヒスタミン内服(かゆみ強い場合) | SPF30以上毎日 |
| 2〜4週間 | 終了 | 同上、酸は施術後2週間以降週2回 | 同上 | アゼライン酸5〜10%週2回、乳酸3〜5%週2回、ビタミンC誘導体5〜10%夜のみ、トラネキサム酸2〜5%朝晩 | SPF50、PA++++、PIH予防徹底 |
部位別の最適化:皮脂量と摩擦への対応
部位によって皮脂量、毛密度、摩擦の程度が異なるため、ケアも調整します。
ヒゲ
ヒゲ脱毛は、毛が太く密集しており、痛みや炎症が出やすい部位です。アトピー肌では、出力を低めに設定し、冷却を強化します。
洗顔:朝晩のアミノ酸系洗顔を徹底します。シェービング後は必ず保湿します。
保湿:ヘパリン類似物質とセラミドを中心に、ナイアシンアミド配合の乳液を追加します。
遮光:顔は紫外線曝露が多いため、SPF50の日焼け止めを毎日使い、マスクでの物理遮蔽も活用します。
シェービング:施術後1週間は電気シェーバーを使い、カミソリは避けます。刃の交換頻度を上げ、切れ味を保ちます。シェービング圧は軽く、押し付けません。
頬・首
皮膚が薄く、摩擦に敏感な部位です。マスクや衣類の擦れに注意します。
洗顔:泡で優しく洗い、こすりません。
保湿:セラミドとワセリンで乾燥を防ぎます。
遮光:SPF50を毎日使います。
摩擦対策:立体型マスク、シルク素材のマフラーなどで摩擦を軽減します。
ワキ
皮脂と汗が多く、毛嚢炎が起こりやすい部位です。
清潔:シャワー後は必ず乾燥させ、湿気を残しません。
保湿:アルコールフリーの化粧水とクリームで保湿します。
衣類:綿やシルクなど通気性の良い素材を選び、制汗剤の使用は施術後1週間避けます。
VIO
皮膚が薄く、摩擦が多い部位です。下着の素材に注意します。
清潔:綿素材の下着を選び、通気性を確保します。汗をかいたらすぐにシャワーを浴びます。
保湿:低刺激のクリームやワセリンで保護します。レチノイドやAHAは刺激が強すぎるため避けます。
衣類:タイトな下着やジーンズは摩擦を増やすため、ゆとりのあるデザインを選びます。
腕・脚
皮脂量は少なく、乾燥しやすい部位です。
保湿:ボディミルクやローションをたっぷり使い、乾燥を防ぎます。
遮光:露出が多い部位は日焼け止めを忘れずに塗ります。
衣類:摩擦の少ない柔らかい素材を選び、ストッキングやタイツは施術後数日避けます。
シェービング圧と刃交換の目安
電気シェーバーの刃は、1〜2か月ごとに交換します。切れ味が落ちると肌に余計な圧がかかり、炎症や毛嚢炎のリスクが高まります。シェービング時は、軽く肌に当てる程度で、押し付けません。
カミソリを使う場合、シェービングフォームやジェルで肌を保護し、逆剃りは避けます。使用後は刃をすぐに洗い、乾燥させて雑菌の繁殖を防ぎます。
家庭用脱毛器を使う場合
クリニックやサロンではなく、家庭用脱毛器を使用する場合も、アトピー肌では慎重な運用が必要です。
出力、照射間隔、冷却、やめるライン
家庭用脱毛器は、医療用より出力が低く設定されていますが、アトピー肌では最低レベルから始めます。取扱説明書に従い、推奨される照射間隔(通常2週間ごと)を守ります。
照射前後に保冷剤で冷やし、炎症を最小限に抑えます。冷却を怠ると、赤みや痛みが強く出ることがあります。
やめるライン: 以下の症状が出た場合、使用を中止し、医療機関を受診します。
- 強い痛みや水疱
- 赤みが24時間以上続く
- かゆみや腫れが悪化する
- 広範囲の色素沈着や瘢痕
悪化した際のエスカレーション手順
症状が軽度なら、冷却と保湿を強化し、次回の照射を延期します。症状が中等度以上(水疱、強い痛み、広範な赤み)なら、速やかに皮膚科を受診します。
受診時には、使用した家庭用脱毛器の機種、出力設定、照射間隔、症状の経過を伝えます。写真があれば、より正確な診断につながります。
家庭用と医療の切替え判断
家庭用脱毛器で悪化を繰り返す場合、医療脱毛への切替えを検討します。医療脱毛では、医師の診察を受け、肌状態に応じた出力調整や薬剤処方が可能です。また、デバイスの選択肢も広く、アトピー肌に適したYAGレーザーやSHRを使用できます。
逆に、医療脱毛で費用や通院頻度が負担になる場合、家庭用脱毛器への切替えもあり得ます。ただし、自己責任で運用するため、リスク管理が重要です。
ケーススタディ:アトピー肌での脱毛成功例
実際のケースを基に、アトピー肌での脱毛の具体的なプロセスを示します。
ケースA:寛解期のヒゲ脱毛、低出力+強冷却で継続成功
プロフィール:29歳男性、IT企業勤務、アトピー性皮膚炎の既往あり。現在は寛解期で、年に1〜2回冬に頬に軽度の湿疹が出る程度。ヒゲが濃く、毎日のシェービングで赤みとかゆみが出る。医療脱毛を検討。
初回カウンセリング:アトピー既往と寛解期であることを申告。ダイオードレーザーを選択。テスト照射で最低出力(10J/cm²)から開始。48時間後、軽度の赤みが出たが24時間で引いた。本照射へ進むことに。
施術プロトコル:
- 出力:初回から3回目まで10J/cm²、4回目から12J/cm²、6回目から14J/cm²と段階的に上昇。
- 冷却:施術前後に保冷剤で各15分冷却。照射中も冷却デバイスを最大設定。
- 保湿:ヘパリン類似物質とセラミド乳液を朝晩、ワセリンを夜間に塗布。
- 遮光:SPF50の日焼け止めを毎日使用。
結果:8回の施術でヒゲが約70%減少。赤みやかゆみもほぼ消失。施術後の炎症は毎回軽度で、24時間以内に引いた。低出力とクーリングの徹底が成功の鍵。
失敗例:5回目に自己判断で出力を16J/cm²に上げるよう依頼したところ、施術後に強い赤みと水疱が出現。医師の診察を受け、ステロイド外用を処方された。次回から14J/cm²に戻し、以降は問題なし。
写真記録:施術前、施術後1日、3日、1週間の4枚を同一照明、同一距離で撮影。色の変化と赤みの引き具合を記録し、次回の出力調整に活用。
ケースB:ひざ裏の湿疹既往部は分割運用で乗り切り
プロフィール:34歳男性、営業職、アトピー性皮膚炎の既往あり。膝裏に慢性的な湿疹が出やすく、年に数回ステロイド外用を使用。脚全体の脱毛を希望。サロン脱毛(IPL)を選択。
初回カウンセリング:膝裏の湿疹既往を申告。全身一括照射ではなく、脚を上部(太もも)と下部(すね、ふくらはぎ)に分け、膝裏は寛解時のみ照射する部位分割を提案された。
施術プロトコル:
- 出力:初回から4回目まで低出力、5回目から中出力。
- ジェル量:通常の1.5倍量を塗布。
- 保湿:ボディミルクを朝晩、ワセリンを夜間に塗布。
- 部位分割:膝裏に湿疹がある場合、その部分のみ延期。他部位は照射。
結果:10回の施術で脚全体の毛が約60%減少。膝裏の湿疹が出た回は3回あり、その都度延期。他部位は順調に進み、自己処理の頻度が週1回に減少。部位分割により、全体の進行を止めずに済んだ。
改善曲線:初回から3回目まで目立った変化なし。4回目から徐々に減毛を実感。8回目以降、自己処理の頻度が減少。
ケースC:夏の悪化期は全身延期、顔のみメンテを選択
プロフィール:40歳男性、建設業、アトピー性皮膚炎の既往あり。夏場は汗と日光で湿疹が悪化しやすい。顔と体の脱毛を希望。医療脱毛(YAGレーザー)を選択。
初回カウンセリング:夏場の悪化傾向を申告。年間計画として、春(4〜5月)と秋(10〜11月)に集中施術、夏(6〜9月)は顔のみメンテナンス照射、冬(12〜3月)に体を集中施術する計画を立てた。
施術プロトコル:
- 出力:YAGレーザーで通常設定可能。反応見て調整。
- 冷却:施術後冷却を徹底。
- 保湿:ヘパリン類似物質とセラミドを朝晩塗布。
- 季節対応:夏場は全身延期、顔のみ月1回低出力メンテ。
結果:約18か月で顔と体の毛が約80%減少。夏場の悪化を最小限に抑え、仕事と脱毛を両立。季節に応じた予約設計が成功の鍵。
設定値のレンジ:顔14〜16J/cm²、体16〜18J/cm²。スポットサイズは大きめ(12mm)を選択し、表皮への負担を軽減。
頻度:6〜8週間ごとに施術。夏場は顔のみ月1回低出力(12J/cm²)でメンテ。
よくある誤解の訂正
アトピー肌と脱毛に関して、いくつかの誤解があります。科学的根拠に基づいて整理します。
誤解1:ステロイドを塗れば出力を上げられる
ステロイド外用は、炎症を抑えるための治療薬ですが、皮膚を薄くし、血管を拡張させる作用もあります。ステロイドを塗ったからといって、照射の出力を上げられるわけではありません。
むしろ、ステロイド外用部位は、照射による刺激が強く出る可能性があります。施術予定日の3〜7日前から塗布を中止するのが安全です。
誤解2:YAGなら必ず安全
YAGレーザー(1064nm)は、波長が長く、表皮のメラニンへの吸収が相対的に低いため、色黒肌やアトピー肌に適しています。しかし「必ず安全」というわけではありません。
炎症が強く残っている状態や、湿疹が活動的な肌では、YAGでもリスクはゼロにはなりません。出力調整と冷却、施術者の判断が依然として重要です。
誤解3:強いスクラブで角質を薄くすれば反応が減る
強いスクラブや頻回のピーリングは、角質層を過剰に削り、バリア機能を破壊します。結果として乾燥や炎症が悪化し、脱毛時の刺激に対して逆に敏感になります。
角質層は適度な厚さを保つことで、バリア機能を発揮します。角質を薄くすることが脱毛の反応を減らすという考えは、逆効果です。
クリニック/サロンとの連携
施術の質を高めるため、クリニックやサロンとの情報共有が重要です。
申告テンプレ
カウンセリング時に、以下の情報を伝えます。
- 症状:現在の肌状態(寛解、軽度の湿疹、強い炎症など)
- 外用:ステロイド外用の頻度と強度、タクロリムス軟膏の使用、保湿剤の種類
- 内服:抗ヒスタミン薬、抗生物質、光感受性を高める薬
- 既往:アトピー性皮膚炎の診断年齢、寛解・増悪のサイクル、接触皮膚炎、金属アレルギー
- 季節:悪化しやすい季節、現在の季節要因
- 仕事環境:屋外作業、マスク着用時間、空調による乾燥
この情報をメモして持参することで、施術者との共有がスムーズになります。
前回設定と反応の共有
毎回の施術記録を自分でも残し、以下を記録します。
- 日付
- 施術部位
- デバイスの種類
- 出力設定(可能なら)
- 施術後の反応(赤み、浮腫、痛み、かゆみの程度と持続日数)
- 使用したスキンケア製品と成分
この記録を次回カウンセリング時に持参し、施術者と共有します。
延期・分割の取り扱い例
肌状態が悪い場合、延期や分割照射を検討します。多くのクリニックやサロンでは、回数制プランなら延期しても回数は消化されません。ただし、有効期限がある場合は事前に確認します。
分割照射(顔と体を別日にするなど)は、追加費用がかかる場合とかからない場合があります。カウンセリング時に確認します。
施術記録シートの書き方
以下の項目を記録シートに記入します。
図1:施術記録シートの書き方(項目例)
- 日付:2025年11月3日
- 施術部位:顎ヒゲ
- デバイス:ダイオードレーザー
- 出力設定:12J/cm²
- スポットサイズ:10mm
- 冷却:冷却デバイス最大設定、施術前後に保冷剤15分
- ジェル:低刺激ジェル、通常の1.5倍量
- 施術後の反応:
- 直後:軽度の赤み、ほてり感あり
- 24時間後:赤みほぼ消失、かゆみなし
- 3日後:問題なし
- 1週間後:毛が抜け始める
- 使用したスキンケア:ヘパリン類似物質、セラミド乳液、ワセリン、SPF50日焼け止め
- 外用歴:ステロイド(弱)を頬に週1回塗布、施術3日前から中止
- 次回への申し送り:出力を14J/cm²に上げても良さそう。冷却は継続。
このシートをファイルに保管し、次回予約時に持参します。
まとめ:今日から始める行動リスト
ここまでの内容を整理し、今すぐ実行できること、今週やること、次回予約前にやることをリスト化します。
今日やること
- 自分の肌状態を確認する(寛解期か、湿疹の有無、掻破の有無)
- 現在使っているスキンケア製品の成分をチェックし、刺激成分があれば使用を中止
- 低刺激の洗顔料と保湿剤を用意する
- クリニックやサロンに電話し、アトピー肌向けのプランがあるか問い合わせる
今週やること
- ステロイドやタクロリムスを使用中なら、施術予定日の3〜7日前から中止(医師に相談)
- レチノイドやピーリング剤を使用中なら、施術1週間前から休薬
- パッチテストを予約し、ジェルや冷却剤へのアレルギー反応を確認
- 日焼け止めを購入し、毎日使用を開始
- 枕カバーやマスクを清潔な素材に交換
- 申告すべき項目をリスト化し、カウンセリングで伝える準備
次回予約前にやること
- テスト照射の結果を評価し、赤みや痛みの程度を記録
- 肌状態を写真で記録し、施術前と比較
- 前回の施術記録を見返し、設定値と反応をメモ
- 日焼け止めと物理遮蔽を継続し、紫外線対策を徹底
- 疑問点や不安があればリスト化し、次回カウンセリングで質問
このリストを実行することで、アトピー肌でも安全に脱毛を開始・継続できます。
参考情報:用語集とFAQ
用語集ミニセクション
- アトピー性皮膚炎:遺伝的素因と環境要因が複合して発症する慢性の炎症性皮膚疾患。乾燥、かゆみ、湿疹が特徴。
- 寛解:症状が落ち着き、皮膚の状態が安定している時期。
- 増悪:症状が悪化する時期。
- TEWL(経表皮水分喪失):皮膚から水分が逃げる度合い。バリア機能低下の指標。
- PIE(炎症後紅斑):施術や掻破後に残る赤み。血管拡張が主因。
- PIH(炎症後色素沈着):炎症後に増えたメラニンで生じる色調差。
- ヘパリン類似物質:保湿と抗炎症作用を持つ成分。ヒルドイドなど。
- セラミド:角層の脂質成分。バリア機能維持に不可欠。
- ワセリン:封入剤。角層からの水分喪失を防ぐ。
- パルス幅:光が照射される時間の長さ。長いほど熱の広がりが緩やか。
- スポットサイズ:照射する光の直径。大きいほどエネルギーが分散し、表皮への負担が軽減。
FAQ:よくある質問と回答
Q1:アトピー肌でも医療脱毛は受けられますか?
A1:受けられます。ただし、寛解期に限定し、炎症部を避け、低出力で開始することが条件です。初回カウンセリングで既往歴や肌状態を申告し、テスト照射で反応を確認してから本照射に進みます。湿疹、浸出、亀裂、二次感染がある場合は施術を延期します。
Q2:テスト照射の評価は何時間〜何日で行いますか?
A2:テスト照射後、24時間、48時間、72時間の3段階で評価します。赤みが24時間以内に引き、痛みやかゆみがなければ、次回から本照射に進めます。赤みが強い、水疱ができる、かゆみが続く場合は、出力を下げるかデバイスを変更します。
Q3:ステロイド外用部位は当日どう扱いますか?
A3:ステロイド外用部位は、当日の照射を避けます。理想的には、施術予定日の3〜7日前から塗布を中止します。ステロイドは皮膚を薄くし、血管を拡張させるため、照射による刺激が強く出る可能性があります。医師の指示で使用している場合、中止の可否を医師に相談します。
Q4:家庭用脱毛器は安全ですか?
A4:慎重な運用なら安全です。最低レベルから始め、3回試して問題なければ1レベル上げます。照射間隔は2週間ごとが基本です。照射前後に保冷剤で冷やし、炎症を最小限に抑えます。強い痛みや水疱が出た場合、使用を中止し、医療機関を受診します。
Q5:サウナや運動はいつから再開できますか?
A5:サウナは施術後1週間避けます。運動は軽い散歩なら翌日から、ジムやランニングは48時間後から再開できます。ただし、発汗と摩擦で毛嚢炎や悪化のリスクがあるため、運動後はすぐにシャワーを浴び、清潔を保ちます。
Q6:色素沈着が出た時の対処は?
A6:PIH(炎症後色素沈着)が出た場合、紫外線対策を徹底し、メラニン生成を抑制する成分(ビタミンC誘導体5〜10%、トラネキサム酸2〜5%、ナイアシンアミド5%)を含む美容液を朝晩使用します。完全に消えるまで数か月かかることもありますが、根気強くケアを続けます。
医療助言に関する注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療助言ではありません。肌の状態や体質は個人差が大きく、本記事の内容がすべての人に適用できるわけではありません。強い痛み、膿、広範囲の紅斑、発熱などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。自己判断での対処が症状を悪化させる可能性もあるため、専門家の診断と指導を受けることを強く推奨します。